Little AngelPretty devil 〜ルイヒル年の差パラレル

  “夏 名残り” 〜忘れたくとも思い出せない、後日談
 


 今年の夏は本当に本当に暑い夏だった。短いだろうと見込まれていた梅雨が、ちょっぴり長引いたその上、あちこちに甚大な被害を出すほど降ったりし。しかもそのまま、肌寒さが尾を引いたので。長期予報を裏切って、そんなに暑くはならないんじゃあと、しきりに囁かれた七月が立ち去ったその途端。一気に気温は下がることを忘れての急上昇。結果としては予報官の面目躍如、いやいやそれをも上回り、40℃以上という最高気温の記録も難なく更新したほどに、文字通りの“記録的な”猛暑酷暑の夏になった。

 「それまでの記録を持ってた山形の人たちが、
  インタビューされてちょっと口惜しそうにしてたのは笑えたがな。」
 「そうそう。教科書とかの記載が変わるらしいからな。」
 「山形にも頑張ってほしいですねとか言ってる人がいたけど、
  何をどうやって頑張るんだろか。」

 ゆく夏を惜しんで、というよりも、明日から新学期が始まるのだというところからの話題逃れ。彼らには少々不似合いな、そんなことをば口にしつつ、ぞろぞろと部室までの道中を運ぶは、それぞれがなかなかに鍛えられたる体躯をした、若々しい盛りの男衆の群れ。まだ陽は高い方だけれど、それでも時刻は夕方のそれであり、ほんの昨日、合宿先から戻ったばかりという身なので、今日のところは、こっちの気候への体慣らしで終しまいというメニューを消化したのみ。当番がボールだのトレーニング用の器具だのを片付けているのを見やりつつ、さて自分も引き上げるかと、ベンチからスポーツバッグを掴み上げ、長い肩紐をよいせと引っかけたところで、

 「…よぉ。」

 気配に気づいて視線を上げると同時、少々表情が固まってしまう。汗まみれの砂まみれという、ちょいと汚れた恰好のこちらとは大違い。さらさらとしていて汗ひとつかいてはないだろう、真っ白いお肌のお嬢さんが。鎖骨もあらわになった胸元に、やわらかなシャーリングの寄った、いかにも涼しげな裾出しオーバータイプのデザインブラウスと、バミューダパンツという軽快ないで立ちにて、淡い色合いの髪を少しだけ涼しい風に揺らして立っており。

 「まだまだ暑いのに、凄っごいわね。」

 本格的なスポーツのトレーニングを、この炎天下にこなしているなんてと、スタミナにか気構えにか、感心して見せる彼女へと、
「高校球児なんざ、もっと凄げぇじゃんよ。」
 苦笑つきで言い返せば、まぁねと即妙にも微笑い返して下さる。賊徒大学アメフト部の、今はまだ一回生ではあるけれど、実質的には主将も同じ、そんな葉柱ルイさんへと気さくにお声をかけて来たお嬢さん。この春にひょんなことから知り合った、短大生のヨウコさんというお人で、

 「ヨウちゃんは?」

 いつだって この彼とワンセットでいるのがデフォルトだと言わんばかりのお言いようへ、ふんと鼻を鳴らすと、
「今日は来てねぇよ。戻ったばかりだから遅寝するって言ってたし、午後からは親父さんと出掛ける約束があるとか言ってた。」
「あら、そう。」
 楽しそうにくすすと笑ったのは、ぶっきらぼうな葉柱の言いようへか、それとも。今日はお父さんに坊やを奪られたんだと、事情が通じていればこそ、冷やかしたかったからなのか。

 「夏休み、あんまり構ってくれなかったわね。」
 「仕方なかろ。合宿に行ったんだ。」
 「ヨウちゃんも連れて、ね。」
 「…まあな。」

 正直、ついてくるとは思わなかった。だって、あんなドラマチックなことがあったのだから。足掛け7年振り。妖一がまだまだ物心付くかつかないかというほど幼かった頃に、ふっとその姿をくらましたそのまま、何の音沙汰もないままだった父上が、やっぱり前触れもないままに家族の元へと戻って来たのが、この七月の終盤頃のことで。

 『どこで何してたか。一切 話さねぇんだよな、これが。』

 相変わらずの一丁前に腕を組み、鹿爪らしくも感慨深いお顔をして見せる坊やであり、とはいえ、
『訊きほじったのか?』
『…そんなこと、しねぇもん。』
 子供じゃねぇんだ、そうそう“なんでなんで”と訊きゃしない。そんな言い方をしてはいたが、

 “もしかして…。”

 あまり問い詰めると、困ってのその末、またぞろ失踪しやしないかと、あの子なりに恐れていたのかも。あんな性分だからして、またぞろすぐにでもどっか行くんじゃなかろうか、家へは居着かないのではないかなんて言ってはいたが、
“それを平気とは、さすがに思ってないってトコだろな。”
 何の不思議もない当たり前のこととして、ずっと一緒にいたのなら、親なんて鬱陶しいばかりだなんて思い始める年頃だろが。坊やの場合はその前提からして大きく違う。声や姿を忘れてもおかしかないほど逢えないでいたものが、やっと戻って来てくれたのだ。逆に離れがたいと思うことだろし、

 “それに、結構“子煩悩”そうな人だったしな。”

 それでなくたって、あんなに愛らしい坊やなのだ。言うことがいちいちおマセではあるが、しっかりしなきゃあと張り詰めてた懸命さからの裏返しだと、そのくらいはすぐさま気がつきそうな。繊細なことへもよくよく通じていての、聡明そうなお人だったし。だとすれば、

 “坊主のストライクゾーン、ど真ん中じゃねぇかよな。”

 坊やの周囲にいる大人の知り合い。葉柱とて、その全員をまでは網羅してないけれど、そのどのお人にも共通するのが、懐ろの深さ、許容の広さであり。やんちゃであろうが、専門分野へ偏っていようが、どの御仁も無茶苦茶に振り回すようなことはしないし、ゴリ押しや無理強いもしない。そのくせ、どんな我儘へも苦笑混じりに付き合ってやるぞという人々でもあるらしく。だからこそ、早く大人になりたい坊やにしてみれば、そんな彼らへいかに凭れないでいられるかが、大人への証明になりもしたのだろうと思わせて。

  ――― 頼もしいまでの自立と、
       それを礎にした、他者への分厚い寛容と。

 それらを備えていてこそ“大人”だとするのなら。破天荒だの落ち着かないだの罵ったそのくせ、その要素、やっぱり持ち合わせていた父上を、知己の大人たちの上へ重ねていた妖一くんだったらしいと、葉柱にも今更ながらに偲ばれて。

 “だとしたら…。”

 やっぱ俺じゃあまだまだ追っつかねぇよなと、セットが少々乱れてた黒髪を、大きな手でかしかしと掻いてみせる。まだあまり面と向かって逢ってもないのに、そこまでのお人と悟らせたほどのお方と、まだまだ青二才な自分とが、肩を並べようだなんて滸がましいのは百も承知だが、あまりに間近いところに現れたこととそれから、自分と彼とを比較する立場にあるのが、あの坊やだってこと。それがどうにも、悩ましくてしようがないらしい葉柱で。

 「…あのさ。」

 不意に黙り込んでしまった葉柱の、そんな内面の葛藤、どう読み取ったものなのか。こちらさんもまた坊やに似ている容姿なものの、ちょっぴり目許がやわらかく、その分、与
くみしやすい気性を匂わせるヨウコさん。かけた声へと結構あっさり、こっちを向いた葉柱へ、
「えと…。」
 その眼差しを…ちらりと泳がせたのは、言ったものかどうしようかと、この期に及んで迷ったせいだが。とはいえ、一旦 口にしておいて、でも引っ込めるのも何だしと、今度は自分への失笑を噛みしめながら言葉にしたのが、

 「ヨウちゃんが葉柱くんへ凭れないのは、対等でいたいからだと思うよ?」
 「あ?」

 だからさ、と。今度はやんわり、淡い色合いの玻璃玉みたいな瞳の据わった目許を細めて、

 「ヨウちゃんの顔を見ちゃあ、
  何か言いたそうな顔しては溜息ついたり、してたんでしょ?」
 「う…。」

 誰がそんなコトしてっかよ、見てもないのに勝手なことをだな。誤魔化してもダメ、ヨウちゃんが言ってたもん。

 「あのね。自分がいない間、お父さんが勝手しないようにって、
  お母さんやあたしとか阿含とか雲水とかと一緒のところを写メで撮って、
  ヨウちゃんの携帯へって毎日送らせてたのよ、あの子。」
 「あ。」

 そか、そういうことをしとったんか。やっぱ不安ではあったらしいのなと、改めて感じ入っているところへ、

 「心配してたよ? 夏バテかなって。」
 「…。」
 「勿論、そんなのとは違うんでしょ?」
 「………。」

 お父さんの動向が微妙に心配ではありながらも、本人は葉柱の合宿先へついて来た妖一。目を離すとどこ行くか判らない父上よりも、手放しでは置いとけないと思われてるってことじゃんよと。それもまたチクリと来たけれど、
「だから、さ。」
 何かしら吐露してくれそうな葉柱だとあって。声にはしないまま、それでも“うんうん”と頷いての、そんな態度でヨウコさんが促せば、
「あいつ、何かコトを起こそうって時には、阿含へ声かけてるじゃねぇか。」
「………はい?」
 だから、と。訊き返されての繰り返すのが、葉柱的にちと辛いのは、これが言わば“愚痴”だから。そして、そうだという自覚もあるから。
「子供離れした何かしら。そうだな、例えば…夏の初めに、俺らに張りついてる奴がいるらしいってことへ、あいつなりに対処しようと構えやがったろ?」
「ええ。」
 余計な手は出すなと葉柱が先にクギを刺したにもかかわらず、じゃあこれみよがしの監視をつければ牽制になりゃしないかと、そんな策を捻り出してた妖一であり、
「そういうことへの相談には、必ず歯医者を選びやがる。」
 いろいろな方面へと顔が利くとか、本人も武道の心得があって頼りになるとか。頼るだけの理由もあろうけれど、それを繰り出しての坊やがしたかったことってのは、突き詰めれば

  ――― 葉柱を守ってやりたかった、ということだ。

 もしかしたらば、その過程をこそ楽しみたかったのかもしれないが、それでも。放ってはおけないと思ったからこそ動いた彼であろうし、その相棒に選んだのがあいつとあって、坊や本人から順番をつけられたみたいで。
「…。」
 そこんところが、少々引っ掛かっていた葉柱であったらしく。だってのに、

 「なぁんだ。」

 ヨウコさんたら、にべもなくのすっぱりと。そのくらいのことと言わんばかりに、斬って捨ててる頼もしさ。う…っと、いかにも不服そうにお顔が尖った葉柱へ、
「い〜い? そういうことの相棒にって、ヨウちゃんが阿含を選ぶのはね。あいつなら多少の悪さ、屁とも思わずにこなせるからよ?」
 こちらさんも結構怖い物知らずであるらしく。そんな恐ろしいお言いようを畳み掛けるように言ってやり、

 「例えば。葉柱くんて、意図してのことに限ったならば、
  せいぜい、ノーヘルでのスピード違反くらいしか、悪さって出来ない人でしょう?」
 「う…。」

 売られたケンカを買ったとか、生意気な奴を相手にいかにもなドスを利かせた声で恫喝したとか、そういうのも細かく言えば悪さかも知れないけどサ、

 「阿含は…場合によっちゃあ、どっかへ忍び込んでみたり、
  ちょいと拝借なんて物をくすねたりだって出来ちゃうからねぇ。」
 「それは…っ!」

 勢い込んだ葉柱が何を言わんとしかかっているかもお見通し、

 「言われりゃ出来る? そこが、葉柱くんを“相棒”に選ばない理由のその2。」
 「? え?」

 鋭い間合いにて発せられたる一言に、即妙に機先を制され、しかも…その2なんて冷静に突きつけられて。あ"?と、少々間抜けなお顔になった総長さんの。案外と細い峰をしたお鼻を、指の先にてちょちょいとつついたヨウコさんが言うには、

 「ヨウちゃんはね、葉柱くんには そゆことをさせたくないのよ。」

 自分が言えば、いやさ、自分がそうして欲しいらしいなと読んだなら、葉柱くん、迷いもしないで犯罪行為だってやっちゃうかも知れない。
「でもね、そんな悪いことへの片棒なんて担がせたくはないの。」
 何だったら時計を戻して、素の顔を知らせないまま出会い直しての“天使みたいにいい子の妖一くん”って存在でいたいのかもしれない。その方がより一層、危ないことへの一丁咬みをさせないで済むでしょう?

 「アテにする・しないじゃなく、大切にしたいから。
  だから、危ないこととか警察沙汰になりそなこととかには、
  声をかけたくはないし、関わらせたくもない、知らせたくもないのよ。」

 合宿へついてったのだって、ずっと一緒にいたいから。お父さんの動向も気にはなってたけれど、それよりも。天秤にかけたら、やっぱり葉柱くんと一緒にいたいって気持ちが勝ったからでしょうに。

 「あれほどの子にそんだけ大事だって思われてて、そんな顔はないでしょう?」
 「う…。/////////

 これらもまた、うがった言いようをしたならば、彼女の憶測に過ぎないはずだのにね。メッと、身を乗り出すよにしての叱咤の眼差しを下さるヨウコさんにあっては、

 「判った?」
 「…はい。」

 そんな揚げ足取りなんて出来ようものかと、威勢で負けた カメレオンズの元総長。とはいえ、

 “…あれ?”

 何でだろうか、ちょっとだけ。ちょいと鬱屈していたがゆえの胸の塞がりようが、少しは晴れたような気もして来て。人との会話の、これも効用…とまでの悟りはなくとも、

 “どんなことが原因であれ、俯くのだけは やめたげてよね。”

 いつだって自負にあふれて胸を張ってる、威容のある葉柱くんが、妖一だって大好きなんだろうからと。目に見えての活力を取り戻したお兄さんへ、その坊やによく似た守護天使様、くすすと甘やかに微笑って差し上げたのでありました。







  ◇  ◇  ◇



 絹糸のようなつやのある金の髪が、時折吹く風に ふわりあおられては、軽やかに躍るのが。パピヨンとかいう仔犬のようで、何とも可憐で愛らしい。華奢な首元をすっきりと見せるは、セーラーカラーのデザインシャツで。腕も脚もすらりと細っこい、それでいて伸びやかな若木のような肢体を包むは、濃青の半ズボンに純白のハイソックス。足元には一丁前にもデッキシューズぽいデザインの黒い革靴と来て。いかにも制服のようなコーデュネイトが、これまた厭味なく映える麗しさ。どこのナショナルスクールに通っておいでのクォーターさんですかと、誰もが惚れ惚れ振り返る、ビスクドールみたいに端正なお顔と白い肌した男の子の手を引くのが、これまた…欧州版のメンズ雑誌から抜け出て来たかのような。白面金髪、長身痩躯の美丈夫なもんだから、人の目の集まりようも半端じゃなくて。

 「…恥ずかしいっての。////////
 「何だよ、凄げぇ似合ってるぞ?」

 父ちゃん、お前のそういうデコラティブなカッコ、見たく見たくてしょうがないのに。
「それが流行りか知らないが、色気のないカッコばっかしてんだもの。」
 自分を父ちゃんと言うこの御仁。とはいえ、こちら様のいでたちもなかなかのもので。亜麻色のサマースーツに、されど今はネクタイまではしていない。襟なしの代わり、濃色のアクセントが襟の縁や胸ポケットへと入ったデザインシャツが、なかなか小粋に似合っているし、ちょいと崩した着こなし方も上品にして華麗。
“ウチじゃあ、いつのだそれっていうよな古着っぽいTシャツに、いかにも高校のだろってトレパン姿でいやがるくせによ。”
 おおう、そりゃまた極端な。
(笑) いわゆる大人の余裕で、いつだってにっぱりと笑っておいでのお父様。そんなせいでか、突然戻って来た胡亂な男の割に、ご近所での受けもいいらしく、
「それを言うならお前こそ。」
 阿含や葉柱くんには素のまんまでいたくせに、家へ近づくといきなりあれこれ取り繕ってやがってよ。
「ハス向かいんチの奥さんへ、いきなり片言で喋り出したときゃあ。熱でも出したかって驚いたのなんの。」
 この人は、あのあの、ボクのおとーさんです。これから、お世話になると思います、よろしくして下さい…だってよ。思い出してのことだろう、うくくと喉奥を鳴らして笑い出す父上へ、
「…うっせぇなっ。////////
 見栄えはモデルばりに決まっているのに、こそこそと交わす会話が過激で乱暴で。

 「笑えるったらありゃしない親子だねぇ。」

 まだ少しほど距離はあるのに、飛び抜けた視力を持ってでもいるものか…二人の唇を読んでたらしい待ち合わせのお相手が、会話を読んでの苦笑を洩らす。その懐ろに抱え上げられていた小さな坊やがうんうんともがいたので、
「判ったよ、でも駆け出しちゃダメだぞ?」
 念を押してから足元へと降ろしてやれば、すぐの傍らに立っていた連れの、折り目の立ったズボンのお膝あたりに掴まって、一緒に行こうよぉとのお誘いをかけるから、
「しようがないかの。」
 苦笑をこぼしたのは、どこぞかの高名な陶芸家…という風情のする、ちょっぴり壮年のおじさまで。手を引いてやってのお望みの方へと歩き出せば、向こうもこちらを見つけての手を振って見せる。

 「お待たせしました。」
 「いやなに。そんなには待ってもおらん。」
 「ヨーイチっ♪」
 「くう、久し振りvv

 この年では恥ずかしい、父上とのお手々つないでを振りほどく理由になるからと。相手の連れていた幼子へ駆け寄れば、
「おしょろいvv
「あ…ホントだ。」
 そちらさんが着ていたのも、今やお懐かしいマリンルック風のセーラー服もどき。愛らしい金髪の水兵さんが大小二人になったものだから、周囲からの声なき どよもしもまた、そのボルテージが上がった模様。それでなくとも此処は…都心とは思えぬほど、目にも鮮やかな緑多き一角。今宵、各界から特別な招待客ばかりを集めてのオープニング・セレモニーが予定されている、ハイソなビル街のゲイトであり。照明を仕込んだ噴水でさりげなくも…セレブやエグゼクティブと、一般の通りすがりとの境界を分けるその端境に立った、こちらの一際あでやかなご一行には、映画俳優かモデルとでも勘違いしたものか、テレビ局のものらしいカメラがこぞって向けられもしたものの。その直前に、黒服が飛んで来て、彼らの姿をきっちりと庇う徹底振り。

 《 俺はともかく、こんな目立つトコに来てもいいのか? あんたたち。》
 《 ごめん、今宵の仕事なんだ。これ。》
 《 うむ。今頃、どこぞから、
   特別な招待客が国際会議のために会場入りしておろうからの。》

 こそそと、どこのだか知らない外国の言葉で会話を始めた大人たちの足元では、

 「此処って、屋上にすごいでっかいドームの公園があって、
  そこに東洋一っていう天体望遠鏡があるんだって。」
 「ぼーえんきょ?」

 そっちも公開前だけれど、今夜だけの貸し切りで特別に見せてもらえるからと。それで釣られたらしい、意外な趣味もある小悪魔坊や。小さな弟分へ、それはにこやかに…半分くらいは大人たちへの協力を意識しての、いかにも愛らしく笑いかけてやっており。大人たちのお顔はカバーされたものの、足元までは想定外だったものか。そんな麗しくも愛らしいツーショットが、翌日のワイドショーの画面のあちこちにちらほらと飾られて、いかに華やかな催しだったかの効果へと使われ。それを見た葉柱や桜庭、セナくんや阿含さんが、それぞれなりに笑ったり吹き出したりするまで…あと16時間ほど、待たねばなるまいて。
(苦笑)



  〜Fine〜  07.8.26.〜9.03.


  *お父さんはちゃんと居着いておいでの模様です。
   しかも、蛭魔くんの姿で、なのになかなか愛想もいいらしく。
   大人だからこその余裕…とはいえ、
   ちょこっと違和感、感じちゃいますね。うんうん。
(苦笑)

ご感想はこちらへvv**

戻る